Nスタイルホームは創業13周年を迎えました。
令和元年6月、買主Xは、以前より物件購入の相談をしていた売主事業者Yから既存マンションの一室を紹介され、購入を決断しました。翌7月に、Xは銀行に希望額4,000万円として住宅ローンの申込みを行い、Yとの間で次の内容の不動産売買契約を締結しました。
①売買代金4,190万円、②手付金は契約締結時に100万円、③引渡日は売買代金全額受領日、④所有権移転登記は売買代金全額の受領と同時に行う。なお、契約書にはリフォーム工事に関する記載はありませんでした。
同年8月、XはYに売買代金全額を支払い、Xへの所有権移転登記を行いました。翌9月に、Xは物件内部を確認して、その状況を踏まえてYとの間でリフォームに関する相談を行いました。さらに、10月にも内部確認を行い、XはYにリフォーム方法の詳細や追加のリフォーム箇所について要望等を告げました。Xは11月にYの店舗を訪れ、Yから「Xの希望するリフォーム工事代金は450万円になる」と告げられ、見積書を提示されました。
12月に、Xは、Yとは別の会社とリフォーム工事契約を締結し、リフォームローン融資を受けた上で、別の会社に工事代金799万円余を支払いました。令和2年1月には、リフォーム工事が完了し、2月にXは物件に入居しました。
XはYに対し、主位的請求として、売買契約の売買代金にはリフォーム工事費用が含まれ、追加料金なしでリフォーム工事を行う合意があったにもかかわらず工事を行わなかったとして、債務不履行による損害賠償請求権に基づき824万円余の支払いを、予備的請求として、Yの勧誘には重要事項についての不実告知があることから、消費者契約法第4条1項1号により、売買契約のうちリフォーム工事部分を取り消し、不当利得返還請求権に基づき代金相当額799万円余の支払いを求める訴訟を提起しました。
裁判所は、次のように判示して、Xの請求を棄却しました。
Xは、売買契約の売買代金にはリフォーム工事費用が含まれており、追加料金なしにYが工事を行うことが合意されていたと主張する。しかし、売買契約書や重要事項説明書には、主張に係る事実について何ら記載がない。売買契約書には中古物件の現状有姿売買とする旨が明記され、契約締結の際にXがこれらについて確認をした様子もうかがわれない。また、契約締結までにXとYの間で追加料金なしで行うべきリフォーム工事や予算の範囲等について打合せや検討がされた様子はうかがわれず、無償で行う工事の範囲等を定めることもなく、追加料金なしでXが希望する工事を行う旨の合意をしたというのも極めて不自然というほかない。
また、売買契約の売買代金にリフォーム工事費用が含まれているとすれば、Xは、初回の建物確認後に希望するリフォームの見積りやそのローンについて相談をしたいとの連絡をしていること、相談の際にはYからリフォームローンの提案をし、仮審査の申込みを行っていること、Xがリフォーム箇所についての希望を告げる都度、Yが見積りを取るとの応答をしていることに対してXは特段の異議も述べていないなど、合理的に説明することが困難な事情が多く見受けられる。
Yがリフォーム工事の一部の実施を承諾したこと自体はYもこれを認めており、争いがない。工事を完了させるに至らなかった理由は、Yにおいて履行期限に間に合うように工事に着手していたところ、Xが期限前の12月1日に工事を中止させたことにあるものと認められる。従って、Yは工事を完了させなかったことにつき債務不履行責任を負うとのXの主張は理由がない。
Xは、Yの説明により、人が居住するに当たって最低限必要となるリフォーム工事はクロスの張替えとハウスクリーニングのみであり、それ以外の部分は工事を必要としていない状態であると認識したと主張する。
しかし、Xは陳述書および法廷で、売買代金は前記以外のリフォーム工事代金をも含むと考えていた旨述べるなど、前記主張と矛盾するともいえる供述をしている。また、建物は平成12年に新築され、前入居者が居住中の物件であったところ、過去に全面的なリフォーム工事がされたとの説明を受けたりした様子もないことなどからすると、Xが売買契約締結の際に前記の通り誤認していたとは認めがたい。そうすると、消費者契約法第4条1項1号によって取り消すことが可能であるとのXの主張は理由がない(東京地裁 令和3年11月16日判決)。
買主は、物件購入を検討していた際に、売主事業者から「キッチンや居室のリフォーム、クロスの張替え、クリーニングが全て建物の購入代金に含まれており、リフォーム工事は全て当方の事業者が行う」などと言われ勧誘を受けたと主張していましたが、契約書の内容、買主のリフォームの相談やローンへの対応等から、この主張は認められませんでした。
関係事業者におかれては、買主の要望を踏まえたリフォーム工事を行う場合には、必要に応じて工事内容・条件等について買主の理解を確認するとともに、売買契約とは別に工事仕様や条件を定めた工事請負契約を締結するなどトラブル防止に向けた対応を行っておくことが望ましいと思われます。
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