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本件建物を賃貸人から賃借した賃借人が、賃貸人に対し、本件賃貸借契約に係る賃料及び共益費が賃借人主張の額であることの確認を求めるとともに、本件賃貸借契約に付された敷引特約は無効であり、賃貸人に預託した保証金から敷引金を控除することは許されない等と主張し、また、更新料の支払を約する条項は無効である等と主張して、支払済みの更新料の返還等を求めた事案において、本件賃料は、賃借人主張の各時点において経済事情の変動等により不相当となったことが認められるとして、差額配分法による試算賃料を70%、スライド法及び利回り法による試算賃料を各15%の割合で考慮する等して鑑定人が算出した賃料を本件建物の適正賃料と認定する一方、敷引特約及び更新料が無効であるとはいえないとした事例(東京地裁 平成24年8月8日 一部認容(確定)ウエストロー・ジャパン)
本件建物を賃貸人Yから賃借した賃借人Xが、Yに対し、本件賃貸借契約に係る賃料は平成22年1月15日以降1か月1,071,000円、その共益費は同日以降1か月189,000円であることの、また、上記賃料は平成23年5月19日以降1か月1,071,000円、その共益費は同日以降1か月189,000円であることの確認(以下、これを「賃料減額請求」という。)を求めるとともに、本件賃貸借契約に付された敷引特約は無効であり、Yに預託した保証金15,405,000円から敷引金2,205,000円を控除することは許されないなどと主張して、XのYに対する15,405,000円の保証金返還債権が存在することの確認を、更には、更新料の支払を約する条項は無効であるなどと主張して、支払済みの更新料4,016,250円の返還等(以下、これらを併せて「債権存在確認等請求」という。)を求める事案である。
裁判所は、次の通り判示し、Xの請求を一部認容した。
賃料減額請求について
本件賃料は、平成22年1月15日時点及び平成23年5月19日時点において、経済事情の変動により又は近傍同種の建物の賃料に比較して不相当となったことが認められる。
そこで、平成22年1月15日時点及び平成23年5月19日時点における本件建物の適正賃料につき検討するに、鑑定人(B不動産鑑定士)は、本件建物が事務所と同様の利用状況にあることを前提として、①差額配分法、②スライド法、③利回り法によりそれぞれ資産賃料を算出した上、差額配分法による試算賃料を70%、スライド法及び利回り法による試算賃料を各15%の割合で考慮するなどして、平成22年1月15日時点における本件建物の適正賃料を月額1,410,000円(賃料1,198,500円、共益費211,500円)、平成23年5月19日時点におけるそれを月額1,360,000円(賃料1,156,000円、共益費204,000円)と算出するのであって(いずれも消費税を除く。)、これによれば、本件建物の賃料は平成22年1月15日以降1か月1,258,425円(1,198,500円と消費税59,925円の合計額)、その共益費は同日以降1か月222,075円(211,500円と消費税10,575円の合計額)であると、また、上記賃料は平成23年5月19日以降1か月1,213,800円(1,156,000円と消費税57,800円の合計額)、その共益費は同日以降1か月214,200円(204,000円と消費税10,200円の合計値)であると認められる。
債権存在確認等請求について
①本件賃貸借契約書には、XがYに対して、本件保証金を預託し、これから償却金として2,205,000円を支払う義務を負うことが明記され、本件敷引金は本件建物の明渡しを完了した後もXに返還されないことが明確に読み取れる条項が置かれていたのであって、Xもこのことを認識して本件賃貸借契約を締結したというべきであるし、本件敷引金の額は本件建物の賃料の2か月分相当額にも満たないもので、その賃料等の額に比較して高額に過ぎるとはいえないことをも考慮すると、本件敷引特約が借地借家法30条の趣旨及び民法90条に反し無効であるなどということはできず(最高裁平成23年3月24日第一小法廷判決・民集65巻2号903項、最高裁平成23年7月12日第三小法廷判決・裁判集民事237号215項参照)、したがって、Yにおいて本件保証金から本件敷引金を控除するのは許されないなどということもできない。
②また、本件更新料の支払を約する条項は、本件賃貸借契約書に一義的かつ明確に記載されている上、その内容は、更新料の額を賃料の1か月分相当額とし、本件賃貸借契約が更新される期間を2年間とするもので、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの事情も認められないのであって、これが借地借家法30条の趣旨及び民法90条に反し無効であるなどということはできない(最高裁平成23年7月15日第二小法廷判決・民集65巻5号2269頁等参照)。
③XのYに対する13,200,000円の本件保証金の返還債権が存在することの確認を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないからこれらをいずれも棄却することとする。
本判決は、敷引金の額は本件建物の賃料2か月分相当額にも満たないのもので、その賃料等の額に比較して高額に過ぎるとはいえないとして、また、更新料の額を賃料の1か月分相当額とし、本件賃貸借契約が更新される期間を2年間とするもので、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの事情も認められないとして、いずれも特約は有効であるとし、平成23年3月24日最高裁第一小法廷判決(平21(受)1679号敷金返還等請求事件)、平成23年7月12日最高裁第三小法廷判決(平22(受)676号保証金返還請求事件)、平成23年7月15日最高裁第二小法廷判決(平22(オ)863号・平22(受)1066号更新料返還等請求本訴、更新料請求反訴、保証債務履行請求事件)の判例を引用した判示である。
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