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売主業者が築後50年以上経過した土地建物を購入し、大規模なリノベーション工事を行って買主に売却したところ、建物に隠れた瑕疵があったとして損害賠償を求めた事案において、建物の屋根庇の軒先から軒裏にかけての部分の腐食について瑕疵を認め、その他については瑕疵を否定し、損害賠償額について調停委員会の算定額をもって認めた事例(東京地裁 平成30年7月20日判決 ウエストロー・ジャパン)
Y(被告:宅建業者)は売主A(個人:消費者)より、平成26年8月に瑕疵担保責任免責により、本件土地建物を購入した。
Yは、平成26年10月頃から同年12月頃までの間、本件建物に設備・水回り・電気・内外装等の大規模なリノベーション工事を行った。
X(原告:個人)とYは、平成26年11月に本件土地建物の売買契約を売買代金1,950万円(土地代金1,572万円、建物代378万円)で締結した。
Yは、Xに同日付の重要事項説明で瑕疵担保責任による解除の説明を行ったが、本件建物が中古物件であることによる不具合及び修繕の必要性等についての説明は行わなかった。
その後、Yは、Xに対し、平成26年12月に本件土地建物を引渡した。
Xは平成27年7月に、工事業者Bとの間で、本件建物に関して雨樋、金具の取外し及び取付け工事の請負倹約を締結した。
Xは、平成27年9月に代理人弁護士を通じて、同月16日付通知書により、Yに対し、屋根の下地が雨漏りにより無くなっていること及び破風板が腐っていることなどを指摘し、本件建物に隠れたる瑕疵があるとして、損害賠償金427万円余を求める旨通知した。
これに対し、Yは、平成28年1月付回答書により、Xの代理人弁護士に対し、本件建物にはYがXに対して損害賠償を負うべき瑕疵は存在しない旨を回答した。
その後、本件は平成28年8月に調停に付され、平成29年6月に調停委員会による現地調査が実施されたが、同年9月に不成立で終了した。
そして、同年11月に再度調停が付され、同年12月に調停案が当事者に提示されたが、不成立で終了したため、XがYに金427万円余の損害賠償を求める本件訴訟を提起した。
裁判所は、次の通り判示し、XのYに対する請求を一部認容した。
認定事実及び調停委員会の意見書によれば、本件建物は、昭和35年新築の中古物件ではあるものの、本契約が締結される直前に、設備・水回り・電気・内外装等について大規模なリノベーション工事が行われていること、本契約の売買代金のうち本件建物の売買代金は378万円であり、築50年以上の建物としては高額であること、YはXに対し、瑕疵担保責任を負担していることから、本件建物は現状有姿で売買されたのではなく、社会通念に照らし、少なくとも住宅としての最低限の基準を満たす品質・性能を有するものとして売買されたとみるのが相当である。
認定事実、調停委員会の意見書等によれば、Xの主張する「隠れた瑕疵」については、以下のアからオまでのとおりと認められる。
調停委員会は、前記で認定した瑕疵を補修する場合に要する費用について、193万円余と算定しているところ、この算定額は、中立的な立場の調停委員会が専門的知見に基づいて算定したものであるから、相当なものと認められる。
また、Xは、一級建築士に調査を依頼し、調査費用として10万円余を支出したことが認められるところ、前記調査のうち、前記で認定した瑕疵に係る部分の調査については、その存在を明らかにするために有益であったといえるから、前記調査費用のうち、5万円の限度で、前記瑕疵と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
以上によれば、損害額は、前記の合計額である198万円余となる。
本判決は、宅建業者が築50年以上経過した建物を売主(個人:消費者)から買取り、大規模なリノベーション工事を実施した上で、買主(個人:消費者)へ売却したところ、引渡後に鼻隠し部分の腐食が発見されたため、買主が瑕疵担保責任に基づく損害賠償を売主業者に請求し、その請求が一部認められたものである。
宅建業者が自ら売主となり、土地建物を居住目的の個人(消費者)に売却する場合は、建物の築年数にかかわらず、売買契約において瑕疵担保責任を負う義務があるため(宅地建物取引業法40条)、建物調査を行い、買主の目的に応じた品質・性能を満たす状態まで工事を行い売却するか、そうでないなら、建物を解体して土地で売却するか等について慎重に判断することが重要である。
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