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借主X(原告)は、貸主Y(被告)所有のマンションの一室について、媒介・管理事業者Aを介して平成25年2月に賃貸借契約(賃料月額39万円余)を締結して、入居しました。その際、Xの内見時に確認されたリビングダイニングのフローリングの一部損傷(約30cm2の黒ずみ)について、補修工事が未了だったため、賃貸借契約書の特約には「入居後にリビング床の補修を行う」旨が記載されました。
同年6月、Aは、補修を工事会社に依頼し、工事日程の調整を行うため、Xに電話連絡を数カ月にわたり繰り返し行いましたが、Xの応答はありませんでした。
平成26年5月、Xは、Yに賃貸借契約の解約を申し入れた上、損傷の補修工事が行われなかったと主張して、6月に退去しました。
平成27年7月、XはYに対し、①居室の効用が阻害されたことによる損害(支払済み賃料の3割相当額)、②転居を余儀なくされたことにより生じた損害、③精神的苦痛に対する慰謝料の合計355万円余の損害賠償金の支払いを求めて提訴しました。
裁判所は、次の通り判示し、Xの請求のうち、居室の効用を阻害されたことによる損害賠償の一部を認容し、他は棄却しました。
本判決では、貸主から借主への補修工事実施の電話連絡について、借主の応答がない状況で、貸主からの訪問や書面連絡が行われていなかったため、貸主の履行遅滞が認められています。貸主として、借主に繰り返し電話連絡してもう応答がない状況であれば、他の連絡手段を検討し、居室への直接訪問や連絡書面の送付を行う必要があったと考えられます。
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