Nスタイルホームは創業13周年を迎えました。
当社は売主様からリゾート地にほど近い戸建ての売却の依頼を受けました。7000万円で売りに出し、半年ほど経ったところ、買主様より内覧のお申し込みがありました。買主様は建築士の方を伴って内覧をされ、その結果、買主様からは6000万円で購入の申し込みがありました。契約前、当社から重要事項説明の案文を買主様側の仲介会社の担当者に送ったところ、買主様側の仲介会社の担当者より、「台帳記載事項証明書の記載が検査済証なしとなっているので追記するようにしてください」という指示がありました。そうしたやり取りを経て、売買契約が締結されました。なお、重説においては、検査済証がないことと、新築時の資料は設計図の写しのみであることを説明しました。
ところがその後、買主様から「検査済証等がないので増改築費用とは別に適法性検証手続きの費用が必要なのでその費用負担をしてほしい」という要請がありました。売主様および当社としては、検査済証がないことは説明しましたので、この要請はお断りしました。その後、そのことは特に議論されないまま決済が行われました。
決済後、買主様より「調査の結果確認申請時の図面よりも建物が150mm高く建築されていたことなどにより、北側斜線規制および日影による高さ制限に違反する建築基準法違反があった」として、是正費用10000万円の賠償を求めることの内容証明が、売主様と当社様側仲介会社に来ました。
売主は引き渡しから3ヶ月以内に買主より通知された本物件建物の専有部分における雨漏り、シロアリのほか、給排水設備の故障の瑕疵についてのみ責任を負う。
本件建物の検査済証は台帳記載事項証明書によると検査済証の取得はありません。
中古戸建て(築7年)売買価格:6000万円 仲介手数料:186万円
X 重要事項説明の法令上の制限ってありますよね。建築基準法違反の説明義務の問題は、法令上の制限とどう違うんですか。
担当弁護士 建築基準法違反の問題は、法令上の制限の問題とは分けて考える必要があります。例えば、容積率が100%というのは、土地の法令上の建物の延べ床面積の限界がこのくらいという法的な制限ですよね。建築基準法違反というのは、この建物は容積率をオーバーしているかどうかという建物の状態の問題、物質的な問題です。
X でも建物が建築基準法に違反しているかどうかなんて、正直わからないんですが。
担当弁護士 そんなに心配する必要はありません。建築基準法違反をすべて見抜かなければならないわけではありません。つまり、仲介業者は建築士や不動産鑑定士ではないので、建物の物的な状態の調査能力や鑑定能力はないですよね。だから、裁判例上は、仲介業者は通常の注意をもって取引物件の現状を目視により観察すればよいとされていて(または五感の作用により把握、調査すればよい、ともいいます)、建築士などの専門家でなければわからないような建築基準法違反に対して仲介業者に調査説明義務はありません。
今回のご相談の事案は、建物の高さが150mm高く建築されていたということですが、家の高さが150mm図面から高いかどうかは、建物を外から注意深く見ただけで判断できません。したがって、裁判所ではこの点について不動産仲介会社に調査説明義務はないと判断され、不動産仲介会社は損害賠償責任を負わないと考えられます。
Y 売主様側仲介会社の立場だと、買主様の要望にどこまで対応すればいいのか悩みますね
担当弁護士 要望が満たされなかったという紛争は裁判例でもよくありますね。今回の事案のように建物確認を取り直さないといけないくらいの改築をyるような場合などには、検査済証がないことがわかっていれば、再度建築確認を取得するときに費用がかかる可能性があります。これは宅建業者でもわかることですからね。なお。過去の裁判例では、
① 買主側仲介会社が、買主が大規模に増改築することを知らされていたのに売主側仲介会社に格別問い合わせをしなかったことや、
② 買主が建築士を同行させていたこと、
③ 建築士が専門的に調査しなければわからないような建築基準法の違反だったこと
が重視されて売主側仲介会社は賠償を免れたという事例もあります(東京地裁平成27年6月16日判決)。
Y 売主側業者には、買主様の購入後の具体的要望は、なかなかくみ取れないという場合もあるんですよね。
担当弁護士 確かにそうですよね。特に最近は直接顔を合わせて話すということが減って、メールを送ったら、一方は伝えたつもりになっていることが多いと思います。他方は要望など伝えられたつもりはない。メールって、読み飛ばしてしまうことがあるじゃないですか。あとから、買主側の要望を伝えたのに対応してくれていなかった、と言われないように、こうしたことは十分注意したいですね。
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