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大気汚染防止法等の改正 アスベスト関連の規制強化による不動産取引への影響

大気汚染防止法や石綿障害予防規則が令和2年に改正され、建物の解体等工事における石綿の飛散を防止するための規制が順次強化されている。これらの法改正が不動産取引に与える影響について解説する。

大気汚染防止法等の改正

大気汚染防止法は、建物の解体等工事における規制対象外の建材から石綿の飛散や、不適切な事前調査による見落としといった問題に対処するため、令和2年の法改正により規制を強化した。

まず、令和3年4月1日以降、すべての石綿含有建材に規制を拡大し、吹付け石綿(レベル1建材)と石綿含有断熱材等(レベル2建材)だけではなく、石綿含有成形版等(レベル3建材)も規制対象にするとともに(図表参照)、元請業者が行う事前調査の方法を法定し、調査記録の作成・保存を義務化した。レベル1・レベル2建材の除去等を伴う解体等工事の場合は、発注者が作業開始の14日前までに都道府県等に届出をする必要があるが、レベル3建材の場合も作業計画を要するなど作業基準を明確化した。

また、元請業者に、除去作業で取り残しがないこと等を知識を有する者に目視で確認させることや、作業記録の作成・保存を義務付け、違法な除去作業に対して直ちに罰則を科す直接罰も創設した。

さらに、令和4年4月1日以降は、一定規模以上の解体等工事の元請業者に、石綿含有建材の有無にかかわらず、事前調査の結果を都道府県知事に報告することを義務付けた。令和5年4月1日以降は、この事前調査を必要な知識を有する者(建築物石綿含有建材調査者等)に依頼することも義務化される。

※建築物の解体→床面積の合計が80m2以上
建築物の改造・補修、工作物の解体・改造・補修→請負金額の合計が100万円以上

また、労働安全衛生法に基づく石綿障害予防規則も、解体等工事に伴う労働者の健康障害防止の観点から、大気汚染防止法と一部重なる規制強化の改正がなされている。

図表 石綿含有建材の分類
レベル 種類
レベル1 吹付け石綿 吹付け石綿、石綿含有吹付ロックウール、石綿含有吹付バーミキュライト、石綿含有パーライト吹付など
レベル2 断熱材等 石綿含有断熱材、石綿含有保温材、石綿含有耐火被覆材
レベル3 成形板等 窯業系サイディング、住宅屋根用化粧スレート、ロックウール吹音天井板、せっこうボード、ビニル床タイル、石綿含有仕上塗材など

法改正の不動産取引に与える影響

これらの法改正による規制強化は、当然、建築の解体工事を行う元請業者の負担を増大させ、その費用の高額化や工期伸張に直結することになり、現場ではすでにその傾向が現れている。

ところが、不動産取引の場面ではこの問題が十分に認識されておらず、今後、建物解体時に想定外の負担を強いられた買主が、売主や仲介業者に対して契約不適合責任や説明義務違反を追及するといった法的トラブルが増大するものと懸念されている。

そこで、売主や宅建業者は、引渡し後に買主による建物の解体が予定されている場合には、以下のような特約や重要事項説明で買主に注意喚起しておきたい。

「買主は本件引渡し後に実施する建物等解体工事に際し、工事の請負業者が実施する石綿有無に関する事前調査に協力するものとし、事前調査に伴う費用について適正に負担することを了承するものとします。また、調査の結果、石綿使用が判明した場合には通常の解体工事費用が割高になるおそれがある他、解体工事の期間が長引くおそれがあることについて予め了承するものとします。(全宅連版「わかりやすい重要事項説明書の書き方」より抜粋)」

また、買主保護やトラブル予防の観点からは、売買契約の際に石綿仕様の有無に関して詳細な専門調査を行い、その結果を特約容認事項に盛り込んだり、売買代金に反映されるといった対応も検討すべきであろう。

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