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賃貸のお困りQ&A

不動産売買契約と媒介報酬請求権

今回のご相談

[質問1]

当社は、買主側の媒介事業者として媒介行為を行った結果、不動産売買契約が成立しました。ところが、決済日までに買主が売買代金を用意できなかったため、売買契約が解除されてしまいました。この場合、当社は、買主に対し、媒介報酬を請求することができますか?

[質問2]

同様に、売買契約成立後に、買主が手付放棄により売買契約を解除してしまうこともありました。この場合も当社は、買主に対し、媒介報酬を請求することができますか?

回答

[質問1]については、買主の責めに帰すべき事由により売買契約が債務不履行解除された場合には、媒介事業者は、媒介報酬を請求することができます

[質問2]については、手付解除の場合、媒介事業者は媒介報酬を求めることはできますが、全額ではなく、媒介報酬の請求は、媒介業務の進行の程度に応じた相当額にとどめるべきでしょう

解説

1. 売買契約の債務不履行解除と媒介報酬

媒介事業者の媒介により売買契約が成立した場合、「媒介契約」の目的は達成されたことになります。媒介事業者の報酬請求権は売買契約成立時に発生しますので、売買代金の決済前であっても、委託者には媒介事業者に対する報酬の支払義務が発生します。

従って、売買契約の成立後に契約が解除されたとしても、解除の原因が媒介事業者の媒介行為とは無関係である場合、媒介事業者の報酬請求権には影響が及ばず、媒介事業者は、媒介報酬を請求することができます。

一方、媒介事業者の債務不履行が原因で売買契約が解除された場合、媒介行為によって売買契約が成立したという報酬請求権の要件を満たさなくなります。よって、この場合は、媒介事業者は、媒介報酬を請求することができないことになります。

なお、「媒介事業者の債務不履行」とは、例えば、媒介事業者の重要事項説明義務違反などが考えられます。

2. ローン解除の場合

  1. (1)一般的に不動産は高額であるため、多くの場合、売買代金は金融機関からの融資(ローン)で賄われます。この場合、融資の審査手続きは、買主が実際に売買契約を締結した後、売買契約書等に金融機関に提出してから開始されることになります。
    そのため、場合によっては、売買契約の締結後に融資の申し込みをしたものの、買主の返済能力や対象不動産の担保不足などが原因で承認が得られないこともあります。この場合、買主が売買契約から無条件で離脱できないとすると、買主は、売主から債務不履行責任を追及される可能性があり、これを避けるため、買主が不動産の売買契約の締結そのものを躊躇してしまう事態に陥りかねません。そこで、このような事態を避けるために、多くの不動産の売買契約では、「買主が融資の承認を得られなかった場合、買主は、売買契約を白紙解除することができる」というローン特約条項が設けられています。

  2. (2)買主がローン特約条項に基づき売買契約を解除した場合は、売買契約はそもそも不成立であった場合と同視することができます。
    よって、この場合、媒介事業者は委託者に対する報酬請求権を失うため、媒介報酬を請求することができません。
    従って、媒介事業者が売買契約成立時に委託者から媒介報酬を受領していた場合は、媒介事業者は、媒介報酬を直ちに返還しなければなりません。

3. 手付解除の場合

  1. (1)先ほど述べたとおり、媒介事業者の報酬請求権は、売買契約成立時に発生し、その後、売買契約が解除されたとしても、解除の原因が媒介事業者の責に帰すべき事由によるものではない限り、媒介事業者の報酬請求権には影響が及びません。
    従って、手付解除の場合は、解除の原因が媒介事業者の責に帰すべき事由によるもではないため、媒介事業者は、媒介報酬を請求することができると考えることもできます。

  2. (2)しかし、手付解除をした買主は、手付金相当額をすでに出捐しています。そのため、これに加えて買主に媒介報酬を負担させるのは、いささか酷であるといえます。
    また、売買契約の当事者や媒介事業者は、手付解除の条項がある売買契約では、契約が成立したとしても、履行の完了前に手付解除がなされる可能性があることも想定しています。さらに、手付解除がなされた場合、媒介事業者は、手付解除がなければ履行の完了までに行ったであろう業務を一部履行していません。
    従って、売買契約の当事者と媒介事業者の利益損失のバランスを考えれば、手付解除の場合、媒介事業者は、当初取り決めた媒介報酬の全額を請求することはできず、媒介報酬の請求は、媒介業務の進行の程度に応じた相当額にとどまると考えるべきです。

  3. (3)なお、不動産の取引実務では、媒介報酬の受領時期について、売買契約が成立した時に報酬の半額を、残代金の決済時に残額を受領するという特約がなされるのが一般的です。
    そのため、手付解除の場合であっても、媒介事業者は、すでに媒介報酬の半額を受領しているのが通常であり、手付解除後に、さらに媒介報酬の残額を支払うよう追加請求することはほとんどないようです。

4. まとめ

[質問1]は、決済日までに買主が売買代金を用意できなかったために売買契約が解除されたケースですが、売買代金を用意できなかった原因が買主の責に帰すべき事由による場合、媒介事業者は、媒介報酬を請求することができます。

これに対し、売買契約にローン特約条項が設けられており、買主の返済能力や対象不動産の担保不足などが原因で融資の承認が得られなかったがために買主がローン特約を解除した場合は、媒介事業者は、媒介報酬を請求することができません。

[質問2]は、買主が手付放棄により売買契約を解除したケースですが、媒介事業者は、媒介報酬を全額請求するのではなく、媒介報酬の請求は、媒介業務の進行の程度に応じた相当額(通常は媒介報酬の半額程度になると思われます)にとどめるべきです。

媒介報酬については、不動産売買の媒介契約においてトラブルが発生しやすい分野の一つといえます。

媒介事業者としては、不動産の売買契約が解除された場合に媒介報酬権はどうなるのか、あらかじめ知識として把握し、無用なトラブルを生じさせることのないよう、十分気をつけておくべきでしょう。

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