Nスタイルホームは創業13周年を迎えました。
当社が以前から管理を受託している物件の1室で、最近入居者の自死がありました。
対象の物件は、1Rや1Kの居室が約30戸で構成される賃貸マンションです。また、駅から近く、周辺には単身者用マンションを含めて居住用の物件が多く、入退去の頻度が比較的高いエリアです。
自死の発見時に警察の臨場はあったものの、メディア報道や周辺で噂が立つようなことはありませんでした。また、発見時には死後10日程経過していましたが、寒い時期であったため遺体が腐敗することもなく、居室への影響はフローリング床に跡が多少残る程度でした。
入居者の父が連帯保証人であったほか、入居者の相続人となる遺族からも「必要な弁償をします」という連絡がありました。
このような場合、物件の所有者はどこまでの範囲で損害の賠償を求めることができるのでしょうか。相談内容の事情を踏まえると、自死に関連して必要かつ合理的な範囲における原状回復費用と、合計で賃料2年分程度の損害賠償請求が認められるでしょう。
もっとも、協議・交渉に当たっては遺族への配慮も心掛けてください。
賃貸借契約上、賃借人には物件で自死をしてはならない義務があるとされています。
その根拠としては、賃借人は賃貸人から借りている物件を善良な管理者の注意をもって保管する義務を負うとされ(民法第601条、第400条)、この義務には物件の価値を物理的・心理的に下げない義務を含むとされているためです。
賃貸借契約の当事者である賃借人は、死亡しているため自ら責任を負うことができません。そこで責任を負うのは、①賃借人の連帯保証人、および②賃借人の相続人です(以下「賃借人側」と言います)。
すなわち、①連帯保証人が賃貸借契約に基づく賃借人の一切の債務を連帯保証することを合意していた場合、自死に伴う損害賠償責任も連帯保証しなければなりません。ただし、個人の連帯保証人の保証契約は、2020年4月1日に施行された民法(債権法)改正後に合意されたものである場合、極度額の定めがなければ無効とされます(民法第465条の2第2項)。そのため、この場合に連帯保証人が負担する責任は、保証契約に定めた極度額の範囲に限定されることとなります。
②賃借人の相続人は、賃借人の権利義務を包括的に承継するため、賃貸借契約条の義務違反の効果である損害賠償責任まで継承することとなります。
自死による責任には、大別して原状回復義務と損害賠償責任の2つがあります。
(賃貸借)
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
(特定物の引渡しの場合の注意義務)
債権の目的が特定物の引渡しであるときは、 債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」について
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk3_000001_00061.html
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