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実際は妻が先に死亡し、数カ月後に夫が死亡。遺言は裁判で無効と判決されました。何故ですか?
AB夫妻は80歳過ぎまで二人だけで暮らしてきましたが、その後二人とも体調を崩し自立生活が困難となったため、長女Xに助力を求めました。
Xは助力にあたり、ABに以下の条件を呈示しました。①AB宅をABの費用でリフォームし、1・2階に台所を作り、Xとその息子は2階で、ABは1階で別々に生活し食事も別にとること。②ABは長男Z(Xの兄)との交流を控えること。
平成24年1月、ABは不本意ながらXの条件を承諾。XらはAB宅に入居し、ABの生活(買物、調理、洗濯、掃除等)を援助しました。
平成25年12月、A(夫)は自筆遺言証書を作成しました。
<本文>自宅はB(妻)持分5分の3X持分5分の2、預貯金は一部(M銀行の預金3254万円余と郵便定額貯金)をX、その余の全部をB、保険金その他はすべてBに相続させる。Zに相続時精算課税の平成19年贈与済1000万円。文末でXの同居と生活援助感謝し、Aの死後Bが平穏に生活できるよう配慮を要請し、日付署名押印。封筒に封入して封印しました。
封筒表面に「遺言書」、裏面に「○私がBより先に死亡した場合の遺言書」と書き、郵便番号、住所、署名。
平成30年9月Bが死亡し、翌年3月にAが死亡しました。令和1年6月に遺言書検認。Xは遺言書で指定された預金の支払いを請求し、銀行が遺言を無効として支払いを拒否したため、支払請求を提訴しました。
原告Xは「遺言の内容は遺言書本文の記載により確定する。封筒文言によって遺言が停止条件付遺言に変更されることはない。裏面文言はBの死亡で新たに遺言書を作る必要を注記したものに過ぎない」と主張。銀行と参加人Zは「本件封筒と遺言書本文は一体を成している。文末にBへの生活配慮要請があることおよびBが死亡の場合の補充遺言がないことからすれば、本件遺言はその全部についてAがBより先に死亡することを停止条件としたものである」と反論しました。
東京地裁は封筒裏面記載と遺言書本文との一体性を認め、遺言全部の停止条件として遺言書本文に例えば「A死亡の際Bが死亡していた場合遺言は無効となり兄妹を平等に取り扱う」と記載した場合、そうした直截の記載が気性の強い原告の感情を害し、たとえ原告に有利な適用がなされてもBに対する生活援助がうち切られる等が心配されたから、本件封筒裏面の記載は不合理とは言えない」と判示し、遺言の解釈にあたっては「当該条項を解釈するだけでは十分でなく遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情および遺言者の置かれていた状況なども考慮して遺言者の眞意を探求し遺言の趣旨を確定すべきである」と説き、遺言の全部についてA死亡時にBの生存を停止条件としたところ、条件不成就が確定し遺言は効力を失ったとして原告の請求を棄却し当該預金債権につき原告と参加人との準共有を確認しました(東京地裁 令和2年7月13日判決判例時報2485号)。
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