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他人の土地に給水設備を設置することについて下水道法の類推適用が認められた事例

今回のケース

Xは本件土地3を所有しています。本件土地3に建物を建てるにあたり、隣接する北西側の土地(本件土地1)に公共汚水・雨水枡および給排水装置(上下水道管)を、隣接する北側の土地(本件土地2)に給排水装置(上下水道管)を、それぞれ工事により設置する必要が生じたため、本件土地1および本件土地2の各所有者(Y1、Y2、Y3、Y4、Y5)に対してその承諾を求めました。

●本件土地1の所有者
X、Y2、Y3が各6分の1、Y1が6分の2、Y4、Y5が各12分1を所有。
●本件土地2の所有者
X、Y2が各4分の1、Y1が4分の2を所有。

Xは、本件土地1の必要な範囲への公共汚水・雨水枡および排水装置の設置、本件土地2の必要な範囲への排水装置の設置の各承諾と、設置工事のために必要な掘削および土地使用の承諾を求めました。また、隣地使用の権利に基づき、本件土地1および本件土地2の必要な範囲への給水装置の承諾ならびにその設置工事のために必要な掘削および土地使用の承諾を求めました。

Y1(法人)は、公示送達による呼出しを受けたものの本件口頭弁論期日に出頭せず、Y2(法人)は、Xが本件土地3を所有し、Y2らが本件土地1をY2、Y1は、本件土地2を所有していることは認めるも、Xの工事範囲等については不知。Y3(個人)は、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しませんでした。一方、Y4およびY5(個人)は要求を認めました。

解説

裁判所は次のように判示し、Xの要求を全面的に認容しました。

(1) 下水道法は隣接地に給排水設備を設置する権利を認める

  1. 下水道法11条1項は、下水道の整備により都市の健全な発達および公衆衛生の向上に寄与することなどの目的(下水道法1条)を達成する必要があることから、建築物の所有者等に対して下水を公共下水道に流入させるために必要な排水管その他の排水設備を設置する義務を負わせたこと(同法10条1項)を受け、義務を負う者が、他人の土地や排水設備を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが困難な場合に、他人の土地または排水設備にとって最も損害の少ない場所または箇所および方法により、他人の土地に排水設備を設置し、または他人の設置した排水設備を使用することができる旨を、同条3項は当該排水設備の設置等をするため、やむを得ないときは、他人の土地を使用することができる旨を規定している。同条1項および3項は、民法220条および221条の特則と解される。

  2. 上水道の給水設備については、上記に係る明文の規定を欠いているが、民法220条および221条は、低地に対する排水や通水に必要な場合の他人の土地の工作物を利用する権利を認めていて、上下水を問わず、通水の必要に応じて他人の土地を利用し得る趣旨を見出すことができる。加えて、上水道の給水は、衛生的で快適な居住環境を確保する上で不可欠な利益に属するもので、宅地利用の重要な部分を占めるのであり、給水設備を設置する必要性が大きい。また、水道の整備は公衆衛生の向上を図る目的のものといえる(水道法1条)ところ、こうした目的は、下水道の整備の目的(下水道法1条)と同一である。

    そうすると、同じ目的を有し、その通水のための設備を整備する必要性が高い上水道について、下水道法を類推適用して、他人の土地に給水設備を設置することができ、他人の土地を使用することができると解するのが相当である。このような権利には、当該他人の土地の所有者に対し、設備の設置や使用の承諾を求める権利が含まれると解される。

(2) Yらの土地に設置しなければ通水し得ない

Y3は、事実を争うことを明らかにしないものと認め、これを自白したものとみなし、Y4およびY5とXの間では、事実は争いがない。

Y1、Y2との関係については、本件土地3には、本件土地1および2に給排水設備(上下水道管)、公共汚水・雨水枡といった給排水設備を設置しなければ上下水道を通水し得ないし、給排水設備の工事を行うには、その設置場所に人が立ち入る必要があると考えられる。

そして、給排水管およびその設置工事の規模に鑑みると、Xの請求はいずれも理由があるから認容することとする(札幌地裁 令和2年10月29日判決ウェストロー・ジャパン)。

総評

今回の事例では、下水道法に類推して、他人の土地への給水設備の設置が認められましたが、令和5年4月1日施行の民法改正においても、電気・ガス・水道らに類する供給等を継続的に受けることができない土地の所有者は、その目的、場所および方法を他人の土地・設備の所有者にあらかじめ通知した上で、必要な範囲内で、その土地にライフライン設備を設置する権利や、設備を使用する権利を有する旨が、明文化されています。

詳しいポイントについては、法務省民事局ホームページで紹介されている「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」が参考になります。

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