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賃貸のお困りQ&A

看板設置制限の説明がなかったとする店舗賃借人の媒介事業者への損害賠償請求が棄却された事例

【ケース】

水産加工品販売店の出店を考えていたXは、媒介事業者Y1を通じて、貸主Y2の所有する店舗を見分しました。店舗はマンション1階にあり、入口上部に隣接会社と共用のビニール製雨避け(テント)が設置されており、Xは、開店にあたり看板を出したい旨をY1に伝えましたが、設置場所など具体的な要望は伝えませんでした。

Y1は、賃貸借契約書等の必要書類一式をXに送付し、Xは記入および押印を行い返送。賃貸借契約書の特約事項には、共用部分等の使用は管理規約および使用細則に準ずると記載されていましたが、送付した書類には、管理規約および使用細則は含まれていませんでした。

Xは、テントの上に着脱が可能である店名の入ったカバー(看板テント)の設置について管理組合に許可を求めましたが、管理規約上、広告設置はできませんでした。しかしXは、看板テントを設置し、店舗を開店しました。管理会社は、これを撤去するよう求めましたが、Xは拒否しました。

その後、Xは看板テントの撤去に応じたものの、店舗を開店後1カ月で閉店することとし、Y1に解約を通知しました。

Xは、Y1およびY2が、契約締結の判断に重要な影響を与える事実について正確な情報を伝える義務を怠ったなどと主張し、484万円余の損害賠償請求訴訟を提起しました。

【解説】

裁判所は、次の通り判示し、Xの請求を棄却しました。

  1. 認定事実等から、「①Xは、店舗見分時に看板を設置したい旨を伝えたが、テントへの広告掲示までは伝えてはいなかった ②Xは、テントが建物の共用部分に該当し、使用方法に制約があることを認識していた ③賃貸借契約書の特約事項には共用部分の使用は管理規約および使用細則に準じると記載され、規約おとび細則には共用部分への広告看板等の取付けは禁止する旨定められていた ④Xは、広告設置が管理組合に許可されなかったことを知りながら広告を掲示した」ことが認められる
  2. Y1は、Xに契約事項を説明していない上、契約書および重要事項説明書等を郵送し、Xが署名押印して返送するなどの過程を経て契約が締結されており、宅建事業者として業務上の業務履践していないことを指摘することができる。しかし、説明義務違反は、契約当事者の理解の程度と契約に至る過程において示された要望の内容等に応じて発生する具体的な義務違反であり、上記①および②の通り、Y1が宅建事業者として、契約締結時の判断に重要な影響を与える事実を調査し、説明する義務の具体的内容として、テントに広告を掲示することができない旨をXにあらかじめ具体的に伝えるべき義務が生じていたとまでいうことはできない
  3. Y2についても、代理人であるY1の義務違反が認められないほか、上述の①および②を考慮すると、Y2の義務違反も認められない(東京地裁 平成29年6月22日判決)。

【総評】

業務用広告看板の設置等をめぐっては、トラブル事例も多く見られます。媒介等を行う際は、広告内容や設置場所だけでなく、管理組合の規制等についても把握し、依頼者に説明できるとよいでしょう。

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