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賃貸のお困りQ&A

単身高齢者の賃借人が亡くなった場合の残置物処理

今回のご相談

当社が管理する物件で、単身高齢者の賃借人が居室内にて亡くなられました。ご遺体は役所や警察の方に対応いただいたのですが、①亡くなられたことにより賃貸借契約は終了したと考えてよいでしょうか。また、②居室内には残置物がありますが、身内の方の有無すら分かりません。今後どのように手続きすればよいのでしょうか。③もし次に単身高齢者に対して賃貸する場合、事前に実施しておくべきことはありますか。

回答

  1. ①賃借人の死亡が生じても賃貸借契約は当然に終了せず、賃借人の相続人に権利義務が承継されます。
  2. ②相続人を特定した上で相続人に連絡を取り、賃貸借の合意解除や、残置物処理を依頼することが考えられます。相続人がいない場合は、相続財産管理人を選任します。
  3. ③国土交通省の「残置物の処理等に関するモデル契約条項』を参照し、死後事務委任契約の締結が考えられます。

解説

1. 超高齢社会と、賃貸借をめぐる状況

内閣府「令和7年版高齢社会白書」を見ると、令和6年10月1日現在の日本の総人口は1億2380万人ですが、総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は29.3%、約3.4人に1人が65歳以上、約5.9人に1人以上が75歳以上となっています。このような状況から、賃貸不動産市場では、高齢者を賃借人とすることを検討する必要性が年々増加しています。しかし、単身高齢者は亡くなった場合に賃貸借契約を終了させる手続きが煩雑であったり、費用が生じるというリスクがあるため、賃貸人が高齢者に賃貸することに躊躇してしまうことが懸念されています。

2. 賃借人死亡時の対応

単身高齢者の賃借人が亡くなった場合、生前に「死後事務委任契約」(後述3)を締結をしておらず、加えて、ご相談のように相続人がすぐに特定できない場合、賃貸借契約の解除や残置物の処理が難航するリスクがあります。

(1) 賃借権の相続
単身高齢者の賃借人が亡くなっても、当然には賃貸借契約は終了せず、賃借人の地位が相続人に相続されます。そのため、賃貸人は、まずは相続人を特定する必要があります。
(2) 相続人との間の、賃貸借契約の解除や残置物の処理
①相続人の調査
例えば、賃借人の子が緊急連絡先や連帯保証人となっていて、賃貸人にとって相続人の把握がしやすい場合は、その相続人に連絡して対応を依頼することになるでしょう。ただ、把握している相続人が法定相続人全てとは限らず、相続人が協力してくれないこともあり、賃貸人に相続人を調査する必要が生じることも考えられます。
相続調査手続きは、本籍地を確認した上で、民法上の法定相続人の範囲を確定するために戸籍謄本などを取得する必要があります。複雑な相続関係が生じていることもあり、一定期間かかることは想定しておくべきです。
また、法定相続人が、「自身が相続人である』と知らないこともよくあります。賃貸人は、最初は、配達証明付きの内容証明郵便で通知することが多いでしょう。これは、お知らせするというの意味のほか、相続放棄が可能な期間(「熟慮期間」:相続開始を知った時から3カ月以内〈民法915条1項〉)のスタートを後で証明できるようにするためでもあります。ただし、生前の関係性が希薄な法定相続人は、この通知だけで「知った」とはいえないと判断される可能性もありますので、通知に反応がない場合は、速やかな訴訟提起が必要となる場合もあるでしょう。
現実には、単身高齢者は、亡くなられる前後で賃料を滞納したり、原状回復費用がかかることもあるので、相続放棄が選択されるケースが多いでしょう。
②相続人へのアプローチ
相続承認や熟慮期間が過ぎることにより相続人が確定すれば、その相続人に対し、賃貸借契約の合意解除や、残置物の処理を依頼することになります。もし、相続人が応じてくれない場合、ここでも相続人への訴訟提起を検討することになるでしょう。
③相続人がいない場合
相続調査後、相続人がいないと確定すれば、相続財産管理人の選任を申し立てることになるでしょう。予納金が必要で、選任後もそれなりの時間がかかる想定が必要です。

3.賃貸借契約の解除や残置物処理に関する死後事務委任契約

前記のリスクは賃貸人が単身高齢者への賃貸を躊躇する理由ともなっています。

そこで、国土交通省は、こうしたリスクを軽減するため、契約解除や残置物の死後事務委任契約の締結を推奨しており、「残置物の処理等に関するモデル契約条項」(以下「モデル条項」)を公表しています。モデル条項を大まかに説明すると次の3つの構成です。

(1) 解除関係事務委任契約
解除関係事務委任契約とは、賃借人である単身高齢者を委任者として、受任者に対し、賃貸借契約の存続中に賃借人が死亡した場合、①「合意解除の代理権」と②「賃貸人からの解除の意思表示を受ける代理権」を授与するものです。なお、民法653条l項では、「委任者又は受任者の死亡」が委任の終了事由とされますが、委任者が死亡しても委任契約は終了しないという合意は有効だと解されます(最高裁 平成4年9月22日判決など)。
受任者に誰が就任すべきかについて、モデル条項では、賃借人である単身高齢者の推定相続人のいずれかや、居住支援をする法人、賃貸物件を管理する管理業者といった第三者を推奨しています。賃貸人が就任することは、無効リスクがあるので非推奨です。
委任事務について、モデル条項では、処理に当たって委任者や相続人の意向を考慮すべきとの条項が設けられています。
なお、相続人からは、特段の事情があれば、委任の任意解除(民法651条1項)が認められる可能性があります(東京高裁 平成21年12月21日判決など)。
(2) 残置物関係事務委託契約
残置物関係事務委託契約とは、賃借人である単身高齢者を委任者として、受任者に対し、賃貸借契約が存続している中で賃借人が死亡した場合に、賃貸物件内に残された動産類(残置物)の廃棄や指定された送付先への送付等の事務を受任者に委託するものです。受任者に誰が就任すべきかや、委託者や相続人の意向を考慮すべきとされることなど、解除関係事務委任契約と同じものが多いです。
どのような事務の内容が想定されるかについては、モデル条項1条で、残置物の廃棄や、指定された送付先に送付することなどが想定されています。金銭や、価値のある動産は換価して相続人に返還するといった柔軟な対応を想定した各種条文が盛り込まれています。
(3) ほかの条項
モデル条項では、ほかにも、死亡時の賃貸人からの受任者への通知、死後事務委任契約が賃貸借契約継続中にもかかわらず終了してしまった場合の新契約締結努力義務、賃貸人への通知義務なども規定されます。

4. 国土交通省のガイド・ガイドブックなど

単身高齢者への賃貸の必要性の高まりに対して、死後事務委任契約はリスクヘッジ策として有用です。国土交通省は、「単身入居者の受入れガイド」や「残置物の処理等に関するモデル契約条項の活用ガイドブック」といった、緻密で、視覚的にも分かりやすい解説書面をリリースしており、そちらもご確認いただければと思います。

参考資料

●国土交通省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」

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