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賃貸のお困りQ&A

不動産管理会社の行った建物明渡交渉は直ちに違法行為か

今回のご相談

当社の近くで営業している不動産管理会社Yは、管理している賃貸マンションの所有者Xから、当該マンションの74名の入居者(賃借人)らに交渉して賃貸借契約を合意解除した上で各室退去させる業務を受託。この際Xは、Yに対し、報酬と立退き料とを明確に区分することなく、あらかじめ多額の金員を交付。Yはその後、10カ月にわたり各賃借人と順次交渉し、合意ができた賃借人との間で賃貸借契約の合意解除を内容とする契約を結んだそうです。なお、これらの契約締結の際、Yは、各賃借人に対し、当該マンションの所有権および賃貸人たる地位を取得した旨の虚偽の事実を告げていました。このようなYの行為は、違法行為になるのでしょうか。

回答

不動産管理会社Yの本件の明渡業務は、弁護士法72条で弁護士資格のない者が行うことを禁止している「その他一般の法律事件」として許されない可能性が高いでしょう。

解説

1.弁護士法72条とは

(1) 弁護士法72条が規定する要件とは

本事業で問題となる弁護士法72条は、弁護士制度を維持するとともに、弁護士でない者が、自らの利益のため、みだりに他人の法律事件に業として介入することにより生じる関係人の不利益をも考慮し、弁護士制度を含めた法律秩序全般の維持を図ることを目的とする規定です。そして、弁護士法72条は、他の法律に定める場合を除き、以下の要件を満たす行為を「非弁行為」として禁止しています。

  1. ① 弁護士または弁護士法人でない者が行うもの
  2. ② 一般の法律事件に関する法律事務の取扱い行為等
  3. ③ 報酬を得る目的
  4. ④ 業としてなされること

(2) 弁護士法72条違反の刑事罰について

弁護士法72条に違反した者は、2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます(同法77条3号)。また、法人の代表者または使用人がその法人の業務に関し同法72条で禁止される非弁行為を行った場合には、法人と併せて、法人の代表者・使用人も300万円以下の罰金に処せられることになります(同法78条2項)。

2.立退き交渉は弁護士法72条の「一般の法律事件」に該当するか

相談のように、築年数の経過したマンションの所有者が、建物を取り壊して建て替えたいという相談を不動産事業者に寄せる事例は多いかと思われます。このとき、弁護士法ではない不動産事業者による立退き交渉が、弁護士法72条の「法律事件」に該当する場合があります。

相談事例と類似のケースで、最高裁平成22年7月20日 決定は、事業者の受託した、立ち退く意向を示していなかった賃借人らに対し、専ら賃貸人側の都合で、契約の合意解除と明渡しの実現を図るべく交渉する業務が、立退き合意の成否、立ち退きの時期、立ち退き料の額をめぐって交渉において解決しなければならない法的紛議が生じることがほぼ不可避である案件に関するものであったとして、弁護士法72条にいう「一般の法律事件」に該当すると指摘しています。

従って、立退き交渉が、上記のように法的紛議が生じることがほぼ不可避といえるケースでは、「一般の法律事件」に該当するといえるでしょう。

3.立退き交渉を行うことが弁護士法72条の「業とする」に該当するか

(1) 弁護士法72条の「業とする」とは何か

弁護士法72条は、法律事務等を「業として」行うことを禁止しており、この「業とする」とは、反復的に又は反復継続の意思をもって法律事務の取扱い等を行うことにより、それが業務性を有する場合をいうものと解されています。

(2) 建物明渡し交渉が1回だけであれば、「業とする」の要件を満たさないのか

本事案とは別に、宅地建物取引事業者が不動産売買契約の解除等の法律事務を1回だけ取り扱った事案では、反復継続の意思が認められず、業としてなしたものではないと判断した裁判例(最高裁 昭和50年4月4日判決)もあります。立退き交渉を一度だけ行った場合に「業とする」ものではないと判断される可能性がないとまではいえません。

しかし、立退き交渉の事務を行ったのが初めてであったとしても、交渉の相手方が多数であったこと等から業としてなしたものとされた事例(広島高裁 平成4年3月6日決定)もあることを踏まえると、不動産事業者等が立退き交渉を受託するのが初めてだったとしても、多数の賃借人を相手に交渉する場合などは、業としてなされたものとされる可能性が高いといえるでしょう。

4.弁護士法72条に関する実務上の注意点

(1) 立退き交渉においての注意点

前述の最高裁 平成22年7月20日決定の事案では、結論として、該当事業者は弁護士法72条に違反するものとされていますが、不動産事業者等による立退き交渉への関与の全てが弁護士法72条に違反するものと判断されたわけではないことに留意が必要です。前記最高裁判決では「一般の法律事件」という要件に加え、「報酬を得る目的」および「業としてなされたこと」というその他の各要件も慎重に判断し、事業者の振る舞いも含めて違法性を否定できないものと判断しています。

とはいえ、立退き交渉は、立退き義務の有無、時期や立退き料の金額を巡り紛議が生じるケースが多く、弁護士法72条違反には刑事罰が科されていることを踏まえれば、不動産事業者が立退き交渉に関与することは消極的であるべきでしょう。

(2) 立退き交渉以外の場面において不動産事業者が注意すべき点について

不動産事業者が、当該受託不動産に関し、賃貸人の代理人として未収賃料を督促する業務を行うということは弁護士法72条に違反しないでしょうか。

この点、単に金額の確定した未払賃料を督促する行為それ自体は事実上の行為であるといえ「法律事務」には該当せず、弁護士法72条違反の問題は生じないとしている裁判例(東京地裁 平成23年3月28日判決)があることからすれば、金額の確定した未収賃料の督促それ自体は「法律事務」に該当しないものとされる可能性は高いでしょう。

もっとも、債権が焦げ付き、債権者が通常の状態ではその満足をうることのできない状況で債権の取り立ての委任を受けて行った請求および弁済受領について、「法律事務」に該当するとした裁判例(最高裁 昭和37年10月4日決定)があることを踏まえると、単なる未収賃料の督促ではなく、未収賃料にかかる債権の回収が困難な状況で取り立ての委任を受けることは「法律事務」に該当するリスクがあり注意が必要です。

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