Nスタイルホームは創業13周年を迎えました。
「次のニュースです。首都圏に住む高齢者から振り込め詐欺で現金をだまし取ったとして、警視庁は住所不定無職の男ら3人を逮捕しました。調べによると、男らは、多数の受け子らに指示を出すなどして組織的に詐欺を働いており、警察は組織的な背景があるものとして捜査を進めています」
Aが、朝のニュースを聞き流して、出社すると店長のBに呼ばれた。
「今朝ニュースで流れていたらしいんだけど、Aさんが以前賃貸仲介した物件が振り込め詐欺で使われていたらしい」
Aの話によると、警察から管理課に捜索差し押さえに部屋の鍵を開錠してほしいという連絡が入り、警察が強制捜査に入って事情が判明したという。
その後、物件オーナー様に管理担当より今回の一件と退去対応のご報告をしたところ「一体どういう入居審査をしているんだ。募集会社と一緒に資料を持ってすぐ説明に来い」とお叱りを受けたそうである。慌てて借主法人の㈱αと代表取締役社長D氏の審書書類を準備して確認した。「まずいな。D氏の住民票に書いてある生年月日と、健康保険証に書いてある生年月日が違っている」困ったことになった。
店長B氏とA氏は、入居審査の段階で不審な点を見抜くことはできなかったのでしょうか。
法人登記から何か読み取れることはないのでしょうか。
この法人登記簿から不審な点を読みとることはできないでしょうか
商号 | ㈱α |
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本店 | 東京都新宿区新宿○丁目3番19号 第一山田ビル3F |
広告をする方法 | 官報に掲載している |
会社設立の年月日 | 平成15年10月10日 |
目的 |
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発行可能株式総数 | 2000株 |
発行済み株式の総数並びに種類及び数 | 発行済株式の総数 1000株 |
資本金の額 | 金1000万円 |
株式の譲渡制限に関する規定 | 当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない |
役員に関する事項 |
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登記記録に関する事項 |
平成27年7月9日 千葉県松戸市千駄堀○-7から本店移転 |
商号 | ㈱α |
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本店 | 東京都新宿区新宿○丁目3番19号 第一山田ビル3F |
広告をする方法 | 官報に掲載している |
会社設立の年月日 | 平成15年10月10日 |
目的 | ソフトフェアおよびハードウェアの開発事業 |
資本金の額 | 金1000万円 |
登記記録に関する事項 |
平成27年7月9日
平成27年7月9日 |
商号 | 有限会社○○インク |
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本店 | 千葉県松戸市千駄堀○-7 |
広告をする方法 | 官報に掲載している |
会社設立の年月日 | 平成15年10月10日 |
目的 |
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発行可能株式総数 | 500株 |
発行済み株式の総数並びに種類及び数 | 発行済株式の総数 500株 |
資本金の額 | 金500万円 |
株式の譲渡制限に関する規定 | 当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない |
役員に関する事項 |
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登記記録に関する事項 |
設立
平成27年7月9日 |
商号、本店住所地、目的など、法人登記上の記載のほとんどは変更することができます。
しかし、会社設立の日だけは、いったん登記簿ができると変更することができません。
そのため、会社設立日が古いことをもって歴史のある会社だと思われがちですが、法人登記上の会社の設立日が古くても、それだけで信用できる会社とはいえません。
というのは、実社会では、活動を休止した「休眠会社」を買い取るということが横行しているからです。休眠会社を買った者は、登記された法務局の管轄外に本店を移動させます(これを管外移転といいます)。このようにすれば、買い取る以前の会社の登記内容が新しい登記上はわからなくなり、休眠会社を買い取ったことを表面上隠すことができるからです。
したがって、管外移転を伴う本店移転がある場合は、過去の閉鎖登記簿を取る必要があります。
一般的に登記上の本店所在地には、本社事務所が置かれ、事業の本拠地となります。そのため、本店移転を頻繁に繰り返したり、遠方に移転するということは通常あまりありませんでした。そのため、
などの場合には、過去の本店所在地を追跡し、登記内容を確認するとともに、どんなビルに入っていたかなどからその会社の信用性を調査してください。
【登記①】を見ると、㈱αの会社設立は平成15年10月10日となっており、一見すると、賃貸借契約締結時ですでに会社設立から12年近く経っているように思えます。しかし、代表者の就任は平成27年7月9日であり、賃貸借契約の直前です。さらに、平成27年7月9日に千葉県松戸市から本店移転がされています。この記載から、「この会社は平成27年7月9日に会社の支配や実態が変わったのではないか?」と疑うことができます。そこで、過去の閉鎖登記簿をさかのぼって調査します。
【登記②】を見ると、平成27年7月9日に商号が変更されています。ますます休眠会社を買い取った疑いが強まりました
さらに登記をさかのぼって【登記③】を見ると、
ことから、㈱αは、休眠会社を買い取り、今回賃貸借契約を締結するためにつくられた会社であることがわかります。
おそらく㈱αの代表取締役D氏は、振り込め詐欺具ルー王に弱みを握られ、このようにしてつくられた会社の表面上の代表取締役となるよう、名義貸しを行ったものとみられます。
このように、登記に疑わしい記載がある場合には、過去の閉鎖登記をさかのぼることなどによって、こうしたいかがわしい会社からの賃借の申し込みを審査の段階で落とすこのができるのではないでしょうか。
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