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賃貸のお困りQ&A

賃貸借契約において契約入居者が行方不明になったとき

今回のご相談

当社はAさんに居住用マンションの1室を貸しています。しかし、ここ数カ月、Aさんの賃料支払いが滞っており、請求書を送っても、部屋を訪ねても反応がなく、郵便受けには郵便物が大量に溜まっている状態です。資料回収はもちろんですが、Aさんは高齢の一人暮らしのため安否も心配です。合鍵を使って部屋の中を確認してもよいでしょうか。また、今後も連絡が取れない場合は、どうしたらよいのでしょうか。

回答

ご相談のようなケースで安否確認を行う場合には、必ず警察官立会いのもと行うことが重要です。

不在が明らかで連絡が取れず行方がわからない場合には、住民票や戸籍を取得し、所在を調査する方法もあります。

亡くなっていることが分かれば、相続人(相続人がいない場合は相続財産清算人)と交渉し、死亡しておらず所在が分からない場合は不在者財産管理人を選任した上で、交渉する必要があります。

解説

1.安否確認のための立入り

近年、賃貸住宅に入居する高齢者の孤独死などがときおりニュースで取り上げられることがあります。急に滞納が始まり連絡が取れなくなった高齢者の賃借人について、その安否を心配するケースも増えているようで、貸主の方から「合鍵で部屋の中を確認したいが法的に問題ないか」という相談を受けることがあります。結論から言えば、賃貸借契約が継続している以上、貸主といえども無断で居室に入ることはできません。後から、居室内の動産を「壊された」「盗まれた」と言われ、民事上・刑事上(窃盗、器物破損)の問題となるリスクがあります。場合によっては、合鍵で居室内を確認する行為が住居侵入罪に問われることもありえます。

そのため、安否確認を行う際には、事前に所轄の警察に相談の上、警察官の立会いのもとに実行することが望ましいです。また可能であれば、貸主(または管理会社)側も複数名で確認するのが望ましいでしょう。

2.荷物を運び出す行為

また、安否確認と同様に荷物の運び出しについての相談もよく受けます。まず、法律は自力救済を禁止しており、裁判所の手続きを経ずに勝手に荷物を運び出すことは違法な行為となります。また、安否確認同様に、民事上・刑事上のトラブルに発展するリスクが大いにあります。そのため、行方不明だからといって勝手に荷物を運び出すことは不可ということになります。

3.行方不明の賃借人(単身者)に対する対応

安否確認等を行った結果、賃借人の行方が分からない場合にはどうすればよいのでしょうか。

まずは、賃借人の住民票・戸籍などを取得して、賃借人の所在や生死を確認しましょう。なぜなら、賃借人の生死によってその後の対応も変わってくるためです。

なお、住民票・戸籍などは、いつでも誰でも無制限に取得できるわけではありません。具体的な事情にもよりますが、今回の相談のようなケースであれば、貸主は自己の権利の行使のためとして、賃借人の住民票・戸籍などを取得できる可能性があります。詳細は、所轄の市役所等や専門家に確認してください。

なお、住民票・戸籍を取得できたとしても、必要な範囲で住民票等を漏れなく収集し、かつ正確に読み取ることは難しい面があります。そのため、この段階から専門家に相談の上で進めることも有効な手段です。

(1) 賃借人(単身者)が死亡していた場合の対応

調査の結果、賃借人が死亡していることが分かった場合、どのように対応すればよいでしょうか。この対応は、相続人の有無によって変わってきます。

相続人がいる場合、(遺言、遺産分割等にもよりますが)原則として相続人が賃借人の地位を承継することになります。そのため、貸主としては、戸籍の調査をもとに判明した相続人に連絡し交渉することになります。相続人の所在が判明しない場合には後記(2)の賃借人が死亡しておらず所在不明な場合と同様の対応が必要になります。

他方で、戸籍を調査しても相続人がいなかった場合、原則として、相続財産清算人の選任を家庭裁判所に申し立てることが考えられます。この場合、選任された相続財産清算人との間で明渡しに関し協議を行うことになります。

なお、賃料滞納が進んでいるAさんの場合、相続財産清算人を選任せず、裁判所にて、相手方をAさんの相続財産法人として、その特別代理人の選任申立てを行い、Aさんの建物明渡訴訟を提起して、強制執行による明渡しの実現を目指す方法も考えられます(詳しくは専門家にご相談ください)。

以上のように、賃借人の死亡は、状況によって貸主の負担が極めて大きくなるものです。そのため、このような事態に備える事前対策も重要です。その一つとして、賃借人死亡後に解約・明渡しなどの事務を受任する者(第三者)を選任しておく方法があります。この方法については、2021年6月7日に法務省・国土交通省が策定した、「残置物の処理等に関するモデル契約条項」(ひな形)が参考になりますので、適宜ご参照ください。

(2) 賃借人(単身者)が死亡しておらず所在不明な場合の対応

では、調査の結果、賃借人の死亡が確認できなかったが、所在が不明である場合(例えば住民票が移転されていないままであった場合など)はどうすればよいでしょうか。

この場合、行方不明者の代わりにその財産管理を行う「不在者財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立てることが考えられます。この場合、選任された不在者財産管理人との間で明渡しに関し協議を行うことになります。

なお、判明した事情等によりますが、不在者財産管理人を選任せず、賃借人を相手に訴状の公示送達の方法により建物明渡訴訟を提起し、強制執行による明渡実現を目指す方法も選択肢の一つになります。

これらの方法は、それぞれ時間や費用等のコストが掛かりますので、具体的事情をもとに専門家にご相談の上、進めていくことが望ましいでしょう。

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