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賃貸のお困りQ&A

賃貸マンションの借主の迷惑行為による貸主の賃貸借契約および解除後の使用料相当損害金等の賠償請求が認められた事例

今回のケース

令和2年6月、貸主Xは、借主Y1との間でマンションの一室について、賃貸期間2年、賃料17万3,000円で賃貸借契約を締結しました。

本物件には、Y1が入居した直後から、Y2を含む複数の人物が頻繁に出入りし、深夜の時間帯に作業音のような騒音を立てるなどの迷惑行為があったため、本物件の階下の居住者から騒音の苦情がXに入り、XはY1に口頭で注意を行いました。

その後も騒音が継続したため、Xは、契約違反の旨を記載した通知書をY1に渡し、Y1から署名の上、返送を受けました。その際に、Y1とY2との同居が判明したので、Xは、賃料等を5,000円加算し、Y2を同居人と認め、騒音に注意するとした同意書を取り交わしました。

令和3年2月、Xは、継続する騒音について、Y1、Y2およびY1の知人らとファミリーレストランで話し合いを行いました。Xが敷物を敷くなど部屋の使用方法の改善を求めたところ、Y2はXに対し「誰のせいだと思っているんだ」などと罵声を浴びせて、Xに本物件および移転先への転居費用等を請求しました。さらに、「XのせいでY1は心を壊した。仕事に行けず、1カ月近く休んでいる」として、休業補償、慰謝料等を要求しました。Xは、一定期間Y1に連絡しない、連絡した場合には賃料6カ月分を支払うとする誓約書にその場で署名させられました。

騒音は、その後も継続し、本物件階下の居住者は令和3年3月に退去しましたが、Xはそこに新たな入居者を入れることはできませんでした。

Xは、令和3年5月に賃貸借契約の解除をY1に請求し、その後、契約解除から明渡しまでの本物件の使用料損害金(賃料等2カ月分(毎月)相当額)215万円余、階下の居住者の退去に伴う逸失利益129万円余、騒音、脅迫的言動に伴うXの治療費および通院慰謝料105万円余、防犯カメラ設置費用37万円余、弁護士費用110万円など合計599万円余の損害賠償請求訴訟を提起しました。

解説

裁判所は、次のように判示して、Xの請求につき421万円余を認容しました。

(1)階下への騒音等の迷惑行為

階下の居住者は就寝中の深夜、上階から足音や物を引きずるような音が聞こえるなどして睡眠が妨げられた。その苦情を受け、XがY1に口頭で注意したが騒音は止まなかった。Xが、騒音を立てる行為が契約違反となる旨を通知書で警告し、Y1は「異議なし」として署名の上、返送した。同居人Y2がいることが判明し、同意書により騒音への注意と賃料等の加算を認めた。その後も騒音が止まず、階下の居住者が退去した。これらによれば、Y1らが騒音を発生する迷惑行為を行ったことが認められ、これは、Y1との関係では、賃貸借契約および管理規約の条項に違反する「共同住宅の秩序を乱す行為」、「騒音により近隣に迷惑を及ぼす行為」に当たるから債務不履行を構成し、Y2との関係では不法行為の成立が認められる。

(2)Xへの脅迫的言動

騒音への改善措置を求める話し合いの席で、Y1らがXに「建物に住めない状況になった、Y1が休業するに至った」としてXに責任を取るように迫り、転居費用、休業補償、慰謝料等の支払いを求めた上、請求金額を提示しているもので、Xが支払義務を負わないものについて、あえて高額な請求をしている。XはY1らの言動により、理不尽な内容の書面を作成するほどに困惑した状態に陥っていたものということができる。これらによれば、話し合いにおけるY1らの言動は、賃貸借契約の契約条項に違反する「自ら又は第三者を利用して相手方に対する脅迫的な言動を用いる行為」、「偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害する行為」に当たるから、Y1との関係では債務不履行を構成し、Y2との関係では不法行為の成立が認められる。

(3)Xに生じた損害

Y1には債務不履行があり、Xとの信頼関係については破壊されたものといえる。Y1は、令和3年5月のXからの契約解除の意思表示により賃貸借契約は請求日をもって終了したと認められ、請求日から明渡しまで賃貸借契約の契約条項に基づき使用料相当損害金215万円余の支払い義務を負う。

また、Xは、階下居住者が退去した後も、同様の苦情が発生することをおそれて、同室を賃貸することができなかったと認められ、129万円余の損害が認められる。

Xの治療費等については、病院の受診が脅迫的言動のあった日より前であることを考慮するとY1らの債務不履行により生じたものと直ちに認めることはできない。

防犯カメラ設置費用37万円余は事実関係を把握するため必要であったと認められる。

前記認定された損害額を前提とすると、Y1らの債務不履行ないし不法行為と相当因果関係のある弁護士費用の額は38万円とするのが相当である。

Y1、Y2はXに対し。損害賠償として421万円余および損害金(防犯カメラ設置費用と弁護士費用の合計額75万円余について、請求書到着日から支払い済みまで年3分の割合で計算した額)の支払義務を負う(東京地裁 令和4年4月28日判決)。

総評

本件では、借主らの騒音および脅迫的言動について借主らの債務不履行や不法行為の成立が認定され、貸主の契約解除請求日での即日解除による賃料等の2倍相当の約定に基づく損害金や階下居住者の退去に伴う逸失利益も損害賠償として認められています。

賃貸住宅の関連事業者、貸主におかれては、本事例を参考として、物件入居者の迷惑行為について、賃貸借契約書および管理規約等に基づきどのような対応が可能なのか再確認するとともに、関係者で交渉などが行われた場合にはその内容を記録などに残しておくことが望ましいでしょう。

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