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特約による担保責任期間経過後の請求であるとして、買主の地中瑕疵に関する契約解除等の請求が棄却された事例

【ケース】

平成27年6月、買主Xは、売主Yとの間で、媒介事業者Bを介して、売買代金6830万円、引渡日を平成28年2月末日の条件で土地の売買契約を締結しました。売買契約には以下の特約が付されていました。

特約:売主は、買主に対し、土地の隠れたる瑕疵について、引渡完了日から3カ月以内に請求を受けたものにかぎり、責任を負う。

XはYから土地の引渡しを受け、地盤調査報告書の交付を受けました。報告書には、地中埋設物は「無」、地中の瓦礫の有無は「多い」と記載されていました。

同年4月、YはBより、東側隣接地から瓦礫が発見された連絡を受け、BはXにもその旨を報告し、土地から瓦礫が発見された場合には連絡するよう伝えました。

同年7月、Xが依頼した建築会社Cが、土地を掘削したところ、埋設物が発見されたため、X、YおよびBは現地を確認。Xは、Yに埋設物の撤去を強く求めました。Yは、弁護士に相談し、「瑕疵担保責任は、特約の期間の3カ月を経過しており、Yが責任を負うことはない」などの助言を受け、Bに内容を伝えました。

同年9月、Yは弁護士に依頼し、Xに合理的範囲の工事費の負担を検討する用意があると伝えましたが、同年11月、Xは、Yに法的責任があるとして埋設物の撤去工事費用の全額負担を求め、その後、売買契約の目的が達成できない、特約は売主が瑕疵を発見した場合には適用されない等と主張し、売買契約の解除および損害賠償等の支払いを求めて本訴を提起しました。

【解説】

裁判所は次の通り判示し、XのYに対する請求を棄却しました。

  1. 特約の規定は、隠れた瑕疵について、XからYに対し、土地の引渡完了日から3カ月以内に請求があった場合に限られるものと解される。Xが、Yに対して埋設物が発見され、撤去を請求したのは、平成28年7月であり、引渡日から3カ月が経過した後なので、仮に、埋設物が隠れた瑕疵だとしても、Yは、特約により瑕疵担保責任を負わない。
  2. また、買主は、特約は売主が瑕疵を発見した場合には適用されないと主張するが、買主と売主いずれが瑕疵を発見したのかを問わず、適用されるものと解すべきである。
  3. Yは、Xと穏便な解決を目指して一定の費用負担はやむを得ないと考え、Xとの交渉を続けており、その間、YがXに対し、特約を援用しない旨や撤去費用全額を負担する旨を明言したことはない。これらの経緯から、Yの特約の援用が信義的に反する等、権利の濫用に当たるとは認められない(東京地裁 令和元年9月17日判決)。

【総評】

疵担保責任の特約では、売主が瑕疵の存在を知っていたかどうかについて争われることは多いですが、本事案の原告の「特約は売主が瑕疵を発見した場合には適用されない」という主張は、理由がないとして否定されています。

一方で、売主の瑕疵担保責任を引渡日から3カ月とする特約が、消費者契約法10条により無効であるとされた事例(東京地裁 平成22年6月29日判決)もあるので参考にしてください。

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