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賃貸のお困りQ&A

所有者不明土地・建物の購入方法は?

今回のご相談

隣地に20年以上誰も住んでいない空き家がある、というお客さまから問合せがありました。退職金の一部で空き家と土地の購入を検討しているそうです。

調査したところ、空き家とその敷地である土地は同一人物の所有ですが、登記簿上の所有者の住所は空き家の住所のままになっていて、他の連絡先も分からないそうです。どのような方法をとれば良いのでしょうか。

回答

従来は、不在者財産管理人の活用が考えられました。

ただ、現在では、2023年4月より施工された所有者不明土地・建物管理命令の制度(民法264条の2以下)を活用し、所有者不明土地・建物管理人からの購入も考えられます。

一方、購入にこだわらず、空き家の管理状況のみを改善させるのであれば、同じく施行された管理不全建物管理制度(民法264条9以下)を活用し、同管理人に建物の修繕等をさせる方法も考えられます。

解説

1. 不在者財産管理人の選任

住民票等の調査の結果、土地建物の所有者の死亡が確認されず、所在が不明な場合、裁判所に行方不明者の代わりにその財産を管理してくれる不在者財産管理人の選任申立てをすることが考えられます(なお、行方不明者の死亡が確認され、その相続人がいない場合には、相続財産清算人選任申立てをすることになります)。

本事案も調査の結果、行方不明者の死亡が確認できないため従来同様、不在者財産管理人選任の申立てを行い、選任後、不在者財産管理人から土地建物を買い取る方法が考えられます。

しかし、不在者財産管理人の場合、選任に数カ月から半年程度かかり、申立ての際に支払う予納金も高額になる傾向にあります(数十万円から100万円程度)。また申立権者が限られており、選任自体が認められない可能性もあります。

2-1. 所有者不明土地・建物管理命令制度の利用

次に、時間と費用の観点から2023年4月施行の改正民法で導入された所有者不明土地・建物管理命令の制度の利用が考えられます。

具体的には、裁判所に所有者不明土地・建物の管理人(裁判所選定の弁護士など)を選任してもらい、裁判所の許可を得て、対象不動産を購入する方法となります。

前述した不在者財産管理人制度と異なる点は、管理対象が行方不明者の財産全てではなく、対象不動産に限られる点です。そのため、不在者財産管理人制度よりも予納金の金額も比較的低額となりやすい傾向にあります。

選任にかかる期間は、事案によりますが、2~3カ月程度です。なお、本事案とは直接関係はありませんが、所有者不明不動産の解消が制度趣旨の一つであるため、対象不動産を買い受けたい民間事業者も本制度の申立てが可能とされています。

なお、本制度は、区分所有建物には利用できませんので、ご注意ください。

2-2. 所有者不明土地・建物管理命令制度の手続き

所有者不明土地・建物管理命令制度を利用した場合、その手続きは、①行方不明者の所在調査、②裁判所への申立て、③予納金の支払、④裁判所による官報公告(1カ月以上の期間)、⑤裁判所による管理命令(管理人の選任)、⑥裁判所による管理命令の登記、⑦管理人の管理行為の実施という流れで行われます。

①の所在調査では、戸籍や住民票の調査、現地調査等を行います。調査事項については、裁判所のホームページに報告書のひな形や必要書類一覧がアップされておりますので、そちらもご参照ください。

②の予納金の金額は事案ごと、主に管理人の行う管理行為の内容などによって異なります。単なる売買の場合は、数十万円程度に収まることが多いと思われます(用途は主に官報公告の費用や管理人報酬など)。

⑦の管理人の管理行為についても事案によって異なりますが、本事案では、建物の中などを確認の上、土地建物の価値の資料(固定資産評価や査定書など)を提出して裁判所の許可を得た上で、選任された管理人から購入することになりますが、なお、この場合、売買代金は最終的に法務局に供託されます。

3. 管理不全建物管理制度

今回のように、隣地の空き家の管理状況が芳しくない場合、2024年4月に施行された管理不全建物の管理制度の活用も考えられます。管理人を選任の上、例えば、隣の空き家のひび割れ・破損が生じている外壁の補修工事や、ごみの撤去・害虫の駆除などを行わせることができます。なお、所有者不明土地・建物管理命令の制度と異なり、申立立てには管理不全により自己の権利等が侵害またはそのおそれがあることなどが必要です。

同制度は、所有者が判明している不動産でも活用することができます。

4. その他の改正(所在不明共有者に関する制度)など

本事案とは関係しませんが、この他にも、共有者のうちの1人が行方不明の場合の制度が2つ創設されています。

1つ目は、共有者が行方不明の共有者の持分を買い取ることができる制度です。共有者は、裁判所の決定を得て、所在不明の共有者の持分に相当する金銭を供託した上で、その持分を取得することができます(民法262条の2)。

2つ目は、行方不明の共有者の持分も一緒に第三者に売却できる制度です。共有者には、裁判所の決定を得て、所在不明共有者以外の全員が特定の者に持分全部を譲渡することを条件に、所在不明共有者の持分をその特定の者に譲渡することができます(民法262条の3)。

共有者が行方不明であったことでこれまで処分が難しかった不動産も、これらの制度を活用することで処分できる可能性もあります。ただし、所在不明の共有者の持分が遺産共有状態(遺言もなく、法定相続人らが遺産分割協議をしないまま、遺産が法定相続人間で共有となっている状態)の場合、相続開始から10年間は、この所在不明共有者に関する制度を使うことができませんので、ご注意ください。

今回は、ご相談への回答とともに、所有者不明土地・建物に対応できる新制度をいくつかご紹介しました。これらの制度の活用の可否や有用性は、事案によって異なります。活用を検討される際は専門家に相談の上で進められることをおすすめします。

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