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賃貸のお困りQ&A

賃借人が契約時に取り決めた更新料を支払ってくれない場合の対応は?

今回のご相談

当社はAさんに居住用マンションの1室を貸しています。Aさんとの賃貸借契約書の中では「賃借人は、両者で更新の合意をしたときには、賃貸人に対し、10万円の更新料をただちに支払う。」と規定しています。

しかし、今回の契約更新の際にAさんは更新合意書を返送せず、更新料も払わない一方、契約期間満了後も住み続けています。

未払いの更新料を請求や支払ってくれない場合に契約の解除はできるのでしょうか。

回答

今回のように法律上、賃貸借契約が更新しているとみなされるような場合(法定更新)には、更新料を請求できない可能性があります。

また、更新料を支払ってくれない場合でも、信頼関係の破壊がなされていると評価されないときには契約の解除もできません。

解説

1.更新料支払特約

更新料は、法律に定めがないため、賃貸人が当然に請求できるものではありません。そのため、賃貸人と賃借人との間で更新料の支払いの合意をすることで初めて、賃貸人は賃借人に更新料を請求することができます。

実務上、建物賃貸借では契約書で更新料の支払いを規定していることが多いのですが、土地賃貸借では契約書に更新料の明記がない場合も(そもそも契約書がない場合も)多いため、特に注意が必要です。

なお、かつて更新料の支払特約は、消費者に不利な規定として、その有効性が問題になりました。最高裁判所は、賃料額や更新期間等に照らして、更新料の額が高額に過ぎるなどの事情がない限り、消費者契約法に違反しないとしました。例えば、最高裁判所は、これまで、賃貸期間が2年、更新料が賃料2カ月分といった事案について更新料支払特約は有効であると判断しています。

2.法定更新と更新料支払特約

しかし、賃貸借契約書で更新料の支払いを定めた場合でも、更新料を請求できないこともあります。今回は相談事例でも取り上げている「法定更新」の場合について解説します。

(1) 法定更新について

前提として「法定更新」とはどのようなものかについて、借地借家法の適用のある建物賃貸借を例に説明します。

借地借家法では、更新合意書を取り交わすなどして「合意更新」を行わないときでも、以下の2つの場合には、従前の契約と同一の条件で契約が更新されたものとみなすこととしています(26条1項および2項)。これを「法定更新」といいます。

  1. (A) 賃貸人が期間満了の1年前から6カ月前までに期間満了により終了することを通知しなかった場合
  2. (B) 賃貸人が(A)の通知をしても賃借人が期間満了後も建物を引き続き使用し賃貸人が異議を述べなかった場合

今回の相談事例は更新合意書の取り交わしができず合意での更新ができていませんが、Aさんが賃借物件を使用し続けていますので、法定更新となっている可能性があります。

なお、賃貸人が更新を認めず期間満了で契約を終了させるとき等には「正当の事由」が必要です(根拠は借地借家法28条。本記事では詳細は省略します)。

(2)法定更新と更新料支払特約

次に、この「法定更新」の場合にも更新料が請求できるのか、という点が問題になります。

この問題に対しては、残念ながら一律の回答はありません。結論は、各契約の経緯や契約書の文言によって変わってくることになります。

例えば、単に「両者が本契約を更新した場合に更新料●●円を支払う。」という合意があった場合には、この「更新」に合意更新だけを含むのか、保伊庭更新まで含むのかが問題となり、各契約の経緯など事案によって判断が分かれることになります。

(3)今回の相談事例と事前の対応策

具体的に今回の相談事例を見てみましょう。事例では「両者で更新の合意をしたとき」に更新料を支払うと契約書には書かれており、合意をしない法定更新については書かれていません。そのため、最終的には契約の経緯等の事情によりますが、法定更新の場合に更新料を支払うという合意は存在しない(つまり更新料を支払う必要がない)と判断される可能性があります。

従いまして、今回の相談事例は、法定更新により契約更新がなされている状況にもかかわらず、法定更新の場合に更新料を支払うという合意がない可能性があるため、相談者はAさんに更新料を請求できないリスクがある、との結論になります。

賃貸人としては、このようなリスクをできる限り低減するために、更新料の定めを置く際に、どのような更新の種類の場合においても更新料を支払わなければならないことを、明示的に契約書に記載しておくことが肝要です。

3.更新料の不払いと契約解除

では、更新料の請求ができる事案で、賃借人がこれを支払わない場合、賃貸人としては、その賃貸借契約を解除することができるのでしょうか。

更新料の不払いについて、最高裁判所は、不払いの態様、経緯その他の事情からみて、賃貸人と賃借人との間の信頼関係を著しく破壊すると認められる場合には、更新後の賃貸借契約の解除ができうるとしています。

例えば、更新料の不払いが1回目の更新料につき2年9カ月、2回目の更新料につき9カ月と相当長期に及んでおり、賃借人が合理的な理由もなく更新料の不払いをしており、その状況が解消される見込みも低いといった事案について、賃貸借契約の解除を認めた裁判例が存在します。

他方で、更新料の不払いがあったがその後支払いがされた事案で、信頼関係は破壊されていないとして契約解除を認めなかった裁判例も存在します。

このように更新料の不払いについては、悪質な事案などでは信頼関係が破壊されているとして契約の解除まで認められる可能性がありますが、不払いがあるだけでただちに契約解除が認められるものではありません。

なお、更新料不払いを理由に解除を行う場合、その可否について事案に応じて個別の判断が必要となりますので、事前に専門家に相談することをお勧めします。

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