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都市計画道路予定地の規制について一部説明がなかったことを理由とする買主の契約解除等の請求が棄却された事例

今回のケース

元宅建事業者の買主Xは、個人である売主Y1との間で、Y2を仲介事業者として、土地(本件土地)および建物(本件建物)の売買契約(本契約)を以下のとおりに締結しました。

  • 売買契約日:平成31年2月8日
  • 売買代金:1億3,400万円
  • 手付金:670万円

本件土地の一部には、都市計画道路予定地が含まれており、本件建物が所在する区域においては、都市計画法53条1項の許可取扱基準として、建築物が下記ア~オに掲げる全ての要件に該当し、かつ容易に移転、または除去することができるものであることが定められていました。

  1. . 市街地開発事業(区画整理、再開発など)の支障にならないこと
  2. . 階数が3以下で、かつ地階を有しないこと
  3. . 高さが10m以下であること
  4. . 建築基準法2条5号に規定する主要構造部が、木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であること
  5. . 都市計画道路区域の内外にわたり存することになる場合は、将来において、都市契約道路区域内に存する部分を分離することができるよう、設計上の配慮すること(分離設計配慮)

Y2は、本契約の締結の際、Xに対する重要事項説明の中で、前記規制のア~エまでは説明はしましたが、オの規制については説明をしていませんでした。

Xは、Y2が重要事項説明に際し、前記規制オの説明をしなかったことは、重要事項説明義務違反となるため、本契約を解除する、あるいは錯誤により無効であると主張し、Y1およびY2に対して支払済みの手付金、仲介手数料等の返還を求める訴訟を提起しました。

解説

裁判所は次のように判示し、Xの請求を全て棄却しました。

(1)重要事項説明義務違反の有無と解除の可否について

本件契約の重要事項説明書には本件土地の一部が都市計画道路予定区域内に位置していることが明示され、Xの本件契約締結前や重要事項説明時にこの点について説明を受け、事業決定がされれば予定区域内に存在する建物の収去の必要が生じることは認識していたのであるから、本件土地と同予定区域の位置関係や制約等の有無および内容について関心を抱いてしかるべきである。

Xの業務が不動産の取得、所有、処分等であることや本件契約の3カ月ほど前までは宅地建物取引業免許を有していたことからすれば、Xにおいても同予定区域の存在やその内容は極めて容易に把握できるところであり、リスク調査や質問等を行うことが十分可能であった。

また、Xは本件契約締結前に現地確認等を行わず、契約締結時までに本件建物の解体や再築について言及していないことから、Y1、Y2らとしては、Xが当面は本件建物を解体せず利用する前提での契約と想定していたと言わざるを得ない。

その上で、本件土地のうち都市計画泥予定区域外の部分は、わずか16.66m2(約5坪)で、地形も三角状であるから、この土地に建物を建築することは事実上困難であると考えられる。現実に同予定区域外の部分に建物を残存させることが客観的に困難である場合は、分離設計配慮の規制について説明する実質的な意味が乏しいと言わざるを得ない。

以上より、本契約締結に当たって、本件規制の説明を受けることがXにおいて重要事項であったとまでは認めがたく、また、Yらが本件規制についての説明を行わなかったことが重要事項説明義務に違反したとは認めることはできない。

従って、重要事項説明義務違反があることを前提とする本件契約の解除に係るXの主張は理由がない。また、同義義務違反を理由とする債務不履行または不法行為に基づく損害賠償請求も理由がない。

(2)錯誤の成否について

Xは本件契約締結前に本件土地の一部が都市計画道路予定区域内に位置することは認識しており、仮にXに何らかの錯誤があるとしても動機に錯誤があるというほかなく、重要事項説明書の記載から本件規制の存在や内容は容易に知ることができ、Y2に何ら建物の再築の可否等について尋ねていない点も勘案すれば、Xの動機が契約内容としてY1に表示されていたと認めることができず、他にこれを認める客観的証拠もない。

よって、Xの請求はいずれも理由がないため、これを棄却する(東京地裁 令和2年11月19日判決)。

総評

都市計画道路予定地における建築制限は、買主の建築計画に大きな影響を与えることから、仲介事業者においては重要事項として説明する必要があります。

本件では、重要事項説明において仲介事業者は建築制限等の説明をしているものの、規制の一部(分離設計配慮)について説明をしていませんでした。

仲介事業者は、買主の情報判断に重要な影響を及ぼす重要な事項については、重要事項説明を行う必要がありますが、本件仲介事業者は、買主が既存建物の建替えを予定せず、既存建物を利用することが前提であること、分離設計は不可能であることから、その説明を行わなかったと思われます。

本判決は、仲介事業者が説明をしなかった事項が、買主が売買契約を締結するかどうかの判断において、重要な事項には当たらないとした点、目的を明示しなければ買主は錯誤を主張することはできない点で、参考になると思われます。

本事案では、仲介事業者は重要事項説明義務違反には問われませんでしたが、実務においては、法的な規制等については可能な範囲の調査を行った上で、重要事項説明書等で買主に説明することを業務の基本として再度ご認識されることをおすすめします。

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