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「借上公営住宅の入居者は、借上原契約の満了時に転借物件を必ず明け渡す決まりですが入居者に借地借家法の更新保護は及ばないのでしょうか?」
最近の判例に添って説明しましょう。
「公営住宅」は地方公共団体が建設、買取りまたは借上げを行い、低額所得者に賃貸し、または転貸するための住宅です。「借上げ」は市町村が他の者から住宅を賃借し、低額所得者に転貸するものです(公営住宅法2条2号、6号以下「法」)。
平成8年10月31日、K市は国土交通省所管の独立行政法人から鉄筋コンクリート造陸屋根14階建ての共同住宅一棟を借り上げました。期間は平成8年11月1日から平成28年10月31日まで。特約として、K市が入居者に転貸するときは借上満了日をもって居住者との転貸借が終了することを条件としていました。
平成14年8月、A(昭和13年生)はK市長に同物件のA号室への入居を申請し抽選の上、市長は同月AをA号室の入居者と定め、決定通知と住宅使用証書および誓約書等を郵送しました。Aは同月22日までに必要事項を記入して前記書面を提出。K市長は同日付でAに市営住宅入居許可書を交付しました。入居指定日は同年9月1日、借上期間は平成28年10月31日まで、「本件部屋は借上げに係るものであるため借上期間満了時に本件部屋を明け渡すこと、賃料月額2万6900円敷金8万7000円」という条件でした。
K市は平成28年3月8日、A代理人に同年10月31日をもって借上期間が満了すること、同日までに本件部屋を明け渡すよう求める旨を通知し、同年10月3日、A代理人に借上期間満了の同月31日までに本件部屋の明渡しを求める通知を再送しました。その後、Aに対し本件部屋の明渡しを提訴しました。
AはK市が法25条2項(借上公営住宅の入居者を決定したときは借上期間満了時に住宅を明け渡さなければならない旨の通知)を欠くから明渡しの義務は生じていないと抗弁。K市は、同条は入居者に退去の時期を予測できるよう配慮した規定であり、入居者決定時点でなく入居許可時点の趣旨であると反論しました。
判決は「法は他の所有者が借上げに参画することに躊躇しないよう配慮し公営住宅の円滑な供給を図る一方、入居者には借上期間満了時に明渡しを余儀なくされることをあらかじめ通知すると共に他の公営住宅への入居を保障し移転料を支払う等、入居者の居住の安定に配慮している」「法は所有者と市町村が合意しない限り借上期間満了後に使用関係が更新されないことを予定しており、借上公営住宅の使用関係には借地借家法26条1項、28条を排除する趣旨であると解すべきである」と判示し、入居許可書の記載による法25条2項の通知を認め、Aに明渡しを命じました。
ご相談の借上公営住宅の使用関係に借地借家法の更新拒絶と正当事由の具備の適用は否定されています(神戸地裁 平成29年10月10日判決最高裁ホームページ)。
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