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売主が宅建事業者である場合の手付解除期限特約が、宅建業法39条2項違反であり無効とされた事例

【ケース】

売主事業者Xと個人買主Yは、平成27年2月28日、土地について1億4980万円で売買契約を締結し、YはXに手付金200万円を支払いました。

本件売買契約では、手付解除期限は3月7日、融資未承認の場合の白紙解除期限(以下、融資特約期限)は、4月20日、残代金支払いは4月末日とされ、違約金は1498万円とされていました。

Yは、4月20日までに銀行の融資承認が得られず、同月28日、Xとの間で融資特約期限を4月28日まで延期する合意が成立していたとして、融資特約に基づき本件売買契約を白紙解除するとXに通知しました。

これに対しXは、残代金不払いを理由に契約解除し、Yに違約金を請求しました(本訴)。

一方Yは、Xに対し、融資特約に基づく手付金の返還を請求しました(反訴)。

なお、X・Yとも4月28日までに本件売買契約の履行に着手したといえる事実はありませんでした。

【解説】

裁判所は、次の通り判示し、Xの請求、Yの反訴請求をいずれも棄却しました。

  1. Yは、4月21日に、Xに対して融資特約期限を延長して欲しいと懇請したが、Xがこれを承諾したという事実は認められない。
  2. 宅建業法39条2項は、宅建事業者が自ら売主となる売買契約の締結に際して手付を受領したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄して契約を解除することができると規定し、同条3項は、この規定に反する特約で、買主に不利なものは無効とすると定めている。
    この点、本件売買契約における手付放棄解除特約とは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでであっても、手付解除期限の平成27年3月7日が経過すればYが手付金を放棄して解除することができないとする内容のものであるから、買主に不利な特約であり、宅建業法39条3項により無効である。
    従って、XもYも契約の履行に着手した事実はないから、Yは手付金を放棄することにより本件売買契約を解除することができる状況にあったことになる。
    この点、Xは、手付解除をする場合には、手付解除であることを明示して意思表示する必要があり、Yはこれをしていないと主張するが、民法557条1項(手付解除)は、契約解除の意思表示とは別に手付放棄の意思表示を要するものではない。
  3. 以上によれば、債務不履行に基づき違約金の支払いを求めるXの本訴請求は、Yの手付金放棄による契約解除が認められるため債務不履行とはならず、その請求は認められない。

また、融資特約により手付金の返還を求めるYの反訴請求は、融資特約期限の延長合意が成立したと認められないので理由がない。
よって、X、Y双方の請求を棄却する(東京地裁 平成28年10月11日判決)。

【総評】

売主が宅建事業者である場合の売買契約(買主が宅建事業者である場合を除く)における手付解除期限特約は、民事上無効となるだけでなく、宅建業法上の行政処分の対象となることもあるので、注意してください。

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