Nスタイルホームは創業13周年を迎えました。
相談者
賃貸契約の解約を連絡してきた方が、「やっぱり退去したくない」と言い張っており、大変困っています。
当社が募集管理を行っているαアパート203号室に入居されていたXから、1月6日に解約申込書が届きました(退去予定日は2月5日になっていました)。
そのため、当社じゃ空き予定の物件として、募集広告を出したところ、人気の物件でしたので、すぐに次の入居者が決まりました。
ところが、10日後の1月16日になって、Xより「異動がなくなったからこのまま住み続けます、解約は撤回します」という連絡がきました。私の方から、次の入居者様も決まっているのでそれでは困りますと伝えたところ、さきほど来店されて「まだ退去もしていないのに次の入居者を決めるなんて非常識だ」「まだ退去予定日が来ていないんだから退去も確定していないでしょう」「絶対出ていきませんから」と大声で騒いで大変なことになってしまいました。
次の入居者様の入居は2月12日です。どうしたらよいでしょうか。
最初に解約の連絡をしたのは、会社の人事異動の内示があったからです。ところが所属している部署から退職者が出てしまい、私の人事異動が取り消しになりました。私は退去したくて解約の連絡をしたわけでもありません。いったい、私に何の落ち度があるのでしょうか。むしろ困っているのはこっちの方です。それに、まだ退去もしていないのに次の入居者を決めるなんて全く非常識です。そもそも退去予定日は2月5日で、退去予定日は来ていないんだから退去も確定していないでしょう。不動産会社は私の居住権をなんだと思っているんでしょうか。
担当弁護士 法的には、解約を撤回することはできませんね。
相談者 そうなんですか、じゃあXには退去を強制することはできるわけですね。
担当弁護士 法的な整理としては解約を撤回することはできませんが、それを法的に強制するためには、判決を取って、強制執行手続きを取らなければなりません。次の入居はすぐとのことですから、その時間はありません。法的な整理をきちんと伝えて、入居者のXが任意に明け渡すよう、慎重な交渉が必要になります。
A. いったん成立した解約を一方的に撤回することはできません。
解約を一方的に撤回することはできません(民法540条2項)。解除・解約の一方的な撤回を認めると、契約の相手方の地位を不安定にするからです(もちろん、貸主・借主との間で合意のうえ、解約をなかったことにすることはできます)。
なお、解約と解除は厳密に区分すると以下のとおりですが、民法540条2項は解除・解約いずれにも適用があります。
ご相談の事案では、1月6日に届いた入居者からの解約は民法540条2項により撤回はできないので、退去予定日どおり、2月5日に賃貸借契約は終了するとして、同日までに退去するよう請求することができます。
一方、意思表示は到達をもって効力が生じます(民法97条)ので、到達前であれば撤回が可能です。この場合、解約の申し出が届く前に解約はしないという意思が相手方に届いているので、相手方の地位が不安定になるということもありません。
したがって、解約申込書が不動産会社に届く前に、解約の撤回の連絡が入っている場合は、解約の効力が発生しないことになるので、賃貸借契約は終了しません。
Xに対しては、相談者Aだけでなく、店長とで交渉にあたった。入居者のXは当初しぶっていたものの、店長から解約は撤回できないこと、新しい入居者から損害賠償請求をされる可能性があることなどを告げると、Xは新たな転居先を仲介手数料免除で紹介することを条件に退去することを提案してきました。
本件は、仲介会社に法的な過失やミスがあるトラブルではありませんでしたが、新しい入居者とのトラブルを避けるため、Xの提案を承諾しXに新たな物件を仲介手数料免除で紹介しました。Xは2月5日に退去しました。
解約は撤回できません。したがって、賃貸借契約は解約により終了します。今回は入居者を説得して退去させることができましたが、入居者が居住している以上、居すわられた場合、明け渡しを強制するためには裁判などの手続きが必要で、新しくその部屋に入居しようとしている方の引っ越しに間に合わないおそれがあります。そのため、状況次第では、新しくその部屋に入居しようとしているお客様へ事情を説明し、別のお部屋にしていただくなどの配慮が必要になる場合もあると考えられます。
法律解釈だけで円満な解決ができない場合もあるので、慎重な対応をしていただく必要があります。
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